1984年10月2日掲載      

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新進フラメンコダンサー 阿藤久子

神戸で活躍している新進のフラメンコダンサー阿藤久子が3日午後6時半から神戸文化中ホールで初リサイタルを開く。
 阿藤は神奈川県出身の27歳。大学在学中にスペイン留学したのを機に、現代舞踊からフラメンコに乗り換え、以来3度のスペイン行を通じて力量を磨いてきた。現地ではマリア・マグダレーナ、マヌエラ・カラスコらに師事、基本的なテクニックとともに、ジプシーの精神世界も深く学んだという。


 スペインで知り合ったギターの藤塚栄二に誘われて2年前に神戸に移り住み、藤塚の主宰する舞踊集団の女性踊り手(バイラオーラ)として、神戸市中央区下山手通のタブラオ”ロス・ヒターノス”を拠点に活動を続けている。リサイタルは1部が「インプレシオン」(印象)。白を基調とした舞台で「ポロ」「アストゥリアス」「アストゥリアーナ」「タラント」などのスペインの名曲をもとに、自由なイメージで奔放に踊る。
第2部はオーソドッスなスタイルのフラメンコを紹介。ギターソロ演奏のあと、「ガロティン」「ソレア」と重要なフラメンコナンバーを阿藤が踊る。


「私のフラメンコはネアカ」と語る阿藤の特徴は清潔感漂うさわやかさ。暗く激しい女の情念を表現するフラメンコとは一味違った印象をアピールする。「体の線がスリムだからアクが出ないということもあるでしょうが、いつまでも日本人好みのウェットなフラメンコばかりじゃいけないという気持ちがある。」


阿藤が強調するのはスペインと日本の"泣き"の差。「スペイン女の泣きは激しいけど、乾いている部分がある」というわけ。軽さ、スマートさを志向する若者たちの支持を集めるゆえんである。
 リサイタルの他の出演はエンリケ・エレディア、滝本正信(歌)、藤塚栄二、藤井正仁、大橋卯三美(ギター)、浦山迅(ピアノ)、野田千晶(ハープ)。

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